きみ

エーリッヒ・フリード

自由のないところでは
きみがその自由
尊厳のないところでは
きみがその尊厳
ぬくもりのないところ
人と人の親しみのないところでは
きみがその親しみでありぬくもり
心無い世界の、ココロ

きみの唇と舌は
問いかけと答え
きみの懐とあたたかなきみの中は
なにかやすらぎのようなもの
きみから離れることは
いつもきみへの再会に続く
きみは未来の始まり
心無い世界の、ココロ

きみは神様ではない
哲学でもない
規則でもなく、所有物でもない
そういう、人がすがりつくものではない
きみは生きている人間
きみは一人の女性
間違えもするし、疑いもする
そして僕を豊かにもする
心無い世界の、ココロ

本当の愛って?と、今ある愛に迷いが出たとき、自分はその愛のなかで
  “自由を感じているか?”
  “人としての尊厳を感じているか?”
  “ぬくもりを感じているか?”
 と尋ねてみるといいのかも。
 
原詩「DU」Erich Fried

© 1979, 1995, 2007 Verlag Klaus Wagenbach, Berlin