そばにいたい

エーリッヒ・フリード

君のそばにいたい
今していることの
最中で抜け出して
君のもとへいってしまいたい

ただ君だけを見て
重ねた手と手より近く
くちづけた唇より密接に
君のそばにいたい
君の中でやさしく君に近づいて
外側から君にくちづけて
内側から君を愛撫する
こうやって ああやって

そして君を胸いっぱい吸い込みたい
ただずっと吸い込みたい
深く、もっと深く
そしてそのまま飲み込んで

でも時々距離をとる
君が見れる距離
手のひら二つ分の距離をとって
また 君に くちづける

恋しい女性に会いたくても会えない状況で、女性との逢瀬に焦がれる心情を描いた詩。実際には会って触れられない中で、自らの感情の海の中にもぐり、その中を進んで女性に会えたことを思い描いているように感じます。直接的な情欲の言葉の中にも感じる、相手の女性への愛情と敬意に心打たれます。
原詩「WOLLEN」Erich Fried

© 1985, 1996, 1998 Verlag Klaus Wagenbach, Berlin